光と景色の分離
建築の一番の肝は開口部です。光と景色、それぞれを分けて開口部を考えるようになってから私の建築は変わりました。
きっかけは2009年に設計したEDGE HOUSEと名づけることになる住宅です。
建築予定地は、住宅地の端(EDGE)に位置する細長い三角形の敷地でした。北西に国有地の雑木林が広がり、南隣は住宅、東側は道路に面していました。敷地の条件から考えると、景色優先で北西側を開けざるをえない。でも、それだけでは採光が不十分だから、東から南にかけてハイサイドライトを設けることにしました。
ある意味、仕方のない処置でした。それまでは「南がごちそう」と思ってきたから、南側を開けることばかり考えてきたけれど、それができない敷地条件の中で、はじめて光と景色を分離したんです。
ところが、完成した建物は今まで自分が手がけたものとは明らかに空気感が違いました。ちょっと照度の落ちた室内から、順光に照らし出された正面の森を見る。室内と開口部をつなぐ壁にはハイサイドの光が当たり、グラデーションがかかった、深みの有る陰影を作り出していました。それは実際以上に奥行きが感じられる空間でした。
光と景色の分離を意識するようになってから京都のお寺を巡ると、その多くが北側に庭を設けていることに気づきました。
ほの暗い境内から順光の庭を眺める、それは日本人が古来受け継いできた感性だったんです。ところが、陰翳礼賛の美
意識は、いつのまにか南側に大開口を開ければいいという南側神話に取って代えられていました。
光と景色を分けて考えるようになり、光に対して、景色に対して、それまでとは別次元で繊細に扱うようになりました。
ディテールを突き詰める
EDGE HOUSEでもう一つ挑戦したのが台形のハイサイドライトです。フラットな屋根では空間の繊細なヴォリュームコントロールが出来ないので勾配のついた屋根にし、その勾配に合わせてハイサイドも長方形ではなく台形にしました。窓を台形にすることで、その角度や大きさの調整により光のボリュームを自在にコントロールできる。これも新たな発見でした。
そして、この台形のハイサイドを可能にしたのがm.a.pのウッドサッシでした。自由に形を作れる木製のサッシだから実現したハイサイドであり、建築でした。
光や景色に対するディテールを突き詰めれば突き詰めるほど、サッシへの要求も多くなります。m.a.pのウッドサッシの大きな魅力は、その対応力とホワイトアッシュを使用していることです。目が詰まって堅い広葉樹だからこそ、1mm単位で溝を掘り分けるといった緻密な加工にも応じてくれます。
繊細な光の扱い抜きにTAOの建築は語れません。そして、そのディテールを実現するのにm.a.pのウッドサッシは欠かせません。これ、m.a.pのインタビューだからリップサービスしてるわけじゃないですよ。

